ソクラテス

ソクラテス (前469頃-前399)は古代ギリシアの人物の中でも特に有名な哲学者です。

彼は対話によって真理を追求しようとし、書物を自ら残すことはありませんでした。

そのため、現在のソクラテス像はプラトンなどのソクラテスの弟子が物語として描いた作品によって作られています。

ソクラテスの特徴は対話の中で相手の発言の矛盾点をつくことです。当時のアテナイは弁論の方法を教えるいわゆるソフィスト(この言葉には否定的なニュアンスがあります)達が多数存在していました。ソフィストは時に理論的に成り立たない言明や過度な誇張表現などを行なっていたので、ソクラテスは問答を繰り返すことで相手自ら間違いに気が付くように誘導していました。

ソクラテスは物事について判断することに非常に慎重で、常に思考に耽っていました。彼はペロポネソス戦争に従軍するのですが、戦場でも突っ立ったまま考えごとをしていたそうです。また、ソクラテスは神々についても存在するかどうか分からないとしていました。このようなソクラテスの問答方法や神々に対する態度、そのほかソクラテスに影響された若者のとった行動によりペロポネソス戦争の敗北につながったとされ、ソクラテスはアテネ市民に疎まれました。ソクラテスは後に告発され、裁判によって死刑が言い渡されました。

ソクラテスはアテネ市民として生きる信念をもっていたため、アテネ脱出の路を断ち、死を受け入れました。

アテネ・アゴラ跡
現代のアテネ・アゴラ跡。アテネ市民たちはアゴラで政治や哲学について議論していた。

参考文献

プラトン『ソクラテスの弁明』, 納富信留訳, 光文社古典新訳文庫, 2012

プラトン『プロタゴラス-ソフィストたち』, 藤沢令夫訳, 岩波文庫, 1988

プラトン『饗宴』,中澤努訳, 光文社, 2013


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エウリピデス

エウリピデス (前485頃-前406頃)はアテネで活躍した悲劇作家です。代表的な悲劇作家3人の中でもっとも若く、現存する作品はアイスキュロス・ソフォクレスを遥かに凌いでいます。

エウリピデスの性格は気難しく非社交的であり、世俗を離れサラミス島で海を眺めながら生活していたと言われています。

彼の作品の特徴は、従来の悲劇は神々や偉大な人間を描いたものであったのに対し、登場人物が普通の人間であることです。彼の著名作『メデイア』では、王女メデイアが自分を捨てた夫に復讐する様子が描かれますが、その復讐の方法は非合理的です。そうであっても、感情の昂りが抑えられず行動した王女の心情が余すところなく描写されており、エウリピデスの劇作家としての実力を感じることができます。

アテネ遠望
現代のアテネ遠望。中央に見える島がサラミス島。

参考文献

『ギリシア悲劇全集 第3巻』, 呉茂一 等編, 人文書院, 1960


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