アリスタルコス 

アリスタルコス (前310頃-前230頃) はサモス島出身の天文学者・数学者です。アリスタルコスはアレクサンドリアに住み研究を行っていたそうです。

彼は太陽中心説(≒地動説)の提唱者として有名ですが、この理論を提示した論文は残っておらず、同時代の天文学者からもアリスタルコスの考えが受け入れられることはありませんでした。アルキメデスはシラクサの王への手紙の中で、アリスタルコスの太陽中心説はあり得ないと書き記しました。

アリスタルコスの現存する論文は『太陽と月の大きさと距離について』です。

この論文では幾何学的な証明が行われています。例えば、太陽や地球、月を大きさの異なる円として間隔を空けて並べて描き、それぞれの円の接線をひきます。円の中心や円上、円の接線の交点などに点を置き、都合の良い場所から補助線を引いてあげるといくつかの三角形ができます。そうするとそれらの三角形の相似により、月や太陽として置いた円の大きさや地球からの距離の比を求めることができます。もっとも、相似の三角形の辺の数値を明らかにすることは困難であり、範囲を絞ることが限界でした。アリスタルコスは、太陽の地球からの距離は、月の地球からの距離の18倍より大きく20倍よりは小さいと結論付けました(実際の距離の差は約400倍)。

数値こそ誤りましたが、アリスタルコスが月の観察結果からこれらの天体の位置関係を幾何学的に緻密に絞りこんでいったその手法は見事です。


参考文献

『世界の名著 9』, 田村松平編, 中央公論社, 1972年


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ゼノン

ゼノン (前335-前263)はキプロス島出身、フェニキア人の哲学者です。ゼノンは元々商人で、ある時船が難破しアテネに漂流した際、書店で偶然哲学書に出会い哲学者へと転身したという伝承があります。

ゼノンはアテネで学園を開き、自身の哲学を教えることになります。この学園の所在地がストア・ポイキレと呼ばれる場所にあったことから、ゼノンの哲学はストア派として広まることとなりました。ストア派はストイックの語源として有名です。

ストア派の思想の要約を試みると、すべての存在は物体であるという唯物論にたちつつ、人間や神を含めすべての物体は一つの実体であるというものであると思われます。

そして人間として正しい行いとは自然、すなわち理性にしたがって生きることであるとし、これが禁欲主義に繋がります。

この思想を土台にして、すべての人間が一つの世界の市民であるというコスモポリタニズムが生まれました。ポリスが衰退する時代のアテネやギリシアの人々にとって、コスモポリタリタニズムは受け入れやすい考えだったのでしょう。

ゼノンの創設したストア派哲学は、その後ローマで多いに普及することとなりました。

ラルナカ・キプロス島
現代のキプロス島・キティオン(現ラルナカ)周辺

参考文献

ジャン・ブラン『ストア哲学』, 有田潤訳, 白水社, 1959


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