サッフォー (前612-?)はアナトリア半島にほど近い、温暖で緑豊かなレスボス島出身の詩人です。
近接するリディアの影響を受け、この島では華やかな文化が形成されました。
サッフォーは黒髪の巻き髪で小柄な女性であったと伝えられています。
サッフォーはレスボス島で何らかの少女の集いを結成し、少女たちと深く関わりながら詩を作成していたそうです。
サッフォーの作品の多くは消失し、残った作品でも詩の一部が欠落しているものが多いのですが、それでもサッフォーの恋愛に対する豊かな表現を感じ取ることができます。サッフォーが恋に落ちた時の衝撃を表した詩や、少女との別れ際に思い出を語る詩などが残っています。
また、この世界でもっとも美しいものは人を愛することであると、美女であるヘレネーでさえも恋愛により家族を捨てトロイアへ渡った(この行為がトロイア戦争の原因となる)ことを根拠に詠いました。
サッフォーは後世の人々により詩の女神として語り継がれ、失恋のショックにより崖から身を投げその生涯を終えたという伝説も生まれました。明治時代の文豪、夏目漱石も作品の中でこの伝説の話題を持ち出しています。
よし子は足を芝生のはしまで出して、振り向きながら、
夏目漱石『三四郎』より
「絶壁ね」と大げさな言葉を使った。「サッフォーでも飛び込みそうな所じゃありませんか」 美禰子と三四郎は声を出して笑った。そのくせ三四郎はサッフォーがどんな所から飛び込んだかよくわからなかった。
参考文献
『サッフォー 詩と生涯』,沓掛良彦, 平凡社, 1988
ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌』,飯尾都人 訳, 竜渓書舎,1994