ゼノン

ゼノン (前335-前263)はキプロス島出身、フェニキア人の哲学者です。ゼノンは元々商人で、ある時船が難破しアテネに漂流した際、書店で偶然哲学書に出会い哲学者へと転身したという伝承があります。

ゼノンはアテネで学園を開き、自身の哲学を教えることになります。この学園の所在地がストア・ポイキレと呼ばれる場所にあったことから、ゼノンの哲学はストア派として広まることとなりました。ストア派はストイックの語源として有名です。

ストア派の思想の要約を試みると、すべての存在は物体であるという唯物論にたちつつ、人間や神を含めすべての物体は一つの実体であるというものであると思われます。

そして人間として正しい行いとは自然、すなわち理性にしたがって生きることであるとし、これが禁欲主義に繋がります。

この思想を土台にして、すべての人間が一つの世界の市民であるというコスモポリタニズムが生まれました。ポリスが衰退する時代のアテネやギリシアの人々にとって、コスモポリタリタニズムは受け入れやすい考えだったのでしょう。

ゼノンの創設したストア派哲学は、その後ローマで多いに普及することとなりました。

ラルナカ・キプロス島
現代のキプロス島・キティオン(現ラルナカ)周辺

参考文献

ジャン・ブラン『ストア哲学』, 有田潤訳, 白水社, 1959


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エピクロス

エピクロス (前342頃-前271頃) はサモス島で生まれた哲学者です。

当時のサモス島はアテネの影響下にありました。エピクロスはアテネに赴き、アカデメイアで講義を受講したと言われています。

その後彼はレスボス島に移りますが、迫害されアテネに戻ります。エピクロスはアテネ郊外に庭園を購入し、仲間たちと静かに共同生活を送ったそうです。

彼が庭園を購入した頃にはアテネは影響力を失いつつある混乱期にあり、エピクロスは政治と関わることはなかったそうです。

エピクロスは自らの仲間を非常に大切にしており、死に際には仲間内での遺産分与や祝辞の規定、奴隷解放などを記した遺言を残しました。

エピクロスの思想は精神的快楽を追求するものです。エピクロスはこの世界が原子で構成されているという唯物論に立ち、感覚によって得られる快楽を人生の原理・目的としました。といってもむやみやたらに快楽を追い求めるものでなく、肉体の健康や魂の平安をもって快楽としています。エピクロスは自分の庭園で、仲間たちとパンを食べながら語り合うことで満足していたそうです。


参考文献

ディオゲネス『ギリシア哲学者列伝 下』加来彰俊 訳, 岩波文庫, 1984

岩田靖夫『ヨーロッパ思想入門』, 岩波ジュニア新書, 2003

ジャン・ブラン『エピクロス哲学』, 有田潤訳, 白水社, 1960


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