トリボニアヌス (?-543)はビザンツ帝国(東ローマ帝国)の時代の法学者であり、ユスティニアヌス帝の命により『ローマ法大全』を編纂した中心的人物です。
ローマ法には長い歴史の積み重ねで多くの法律が存在しており、新しい法律が追加されることにより法律間で矛盾・重複が発生する事態が生じていました。そのような状況を改善するため、ユスティニアヌス帝は法律の体系を明確に示す(そしてローマ帝国としての権威を高める)ことを目論みます。
トリボニアヌスを中心とした法学者たちはローマ帝国成立以来の莫大な法律文献を読みこみ、法律の学説をまとめた『学説類集』、法律入門書として『法学提要』、そして皇帝の発布した勅令をまとめた『勅法類集』をラテン語で執筆しました。これらの総称が『ローマ法大全』です。
しかし当時のビザンツ帝国はギリシア語が日常で用いられており、これらの書物を読める人は限られていました。それでは本末転倒であるので、『ローマ法大全』は後にギリシア語に翻訳されます。また、ユスティニアニス帝がなした勅令をまとめた『新勅法』も、皇帝の死後ギリシア語で発布されました。
参考文献
『ローマ法史概説』, 町田実秀, 有信堂, 1963
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