アンセルムスは北イタリアのアオスタ出身の神学者です。
彼はアオスタの修道院付属学校で学んだ後、ノルマンディー(フランス北部)の修道院で敬虔な生活を送り、その生活の中で思想を深めます。
アンセルムスは神について、聖書の権威に基づかずに理性によって説明しようとしました。
彼の理論を要約すると、存在するものの中には最善・最大・最高のもの(本性)が存在することを考えることができ、それを通じて他のすべてのものが存在しているのだ(実在論)ということだと思われます。例えば、それぞれの人間にとっての「善」の基準はバラバラであっても、個別の「善」の基準の中にはそれが「善」たりうる共通のものを含んでいると考えることができます。
アンセルムスはこのような本性、ひいては神がどのように存在しているかは人間の知性の限界を超えていることから、彼は「理解するためにはまず信仰しなければならない」と考えました。
アンセルムスは後にイングランド(ノルマン朝)の王によりカンタベリー大司教の座に任命されることになります。しかし当時のイギリスでは王による任命を受けた場合、財産を貢納することが求められていました。アンセルムスはそのような慣習を嫌い、また、ウルバヌス2世の教皇承認を巡って王と対立し、アンセルムスは何度か追放されることとなります。最終的に国王が聖職者の叙任権を放棄することで政治的決着がつき、アンセルムスのカンタベリー大司教としての地位が確立されました。
参考文献
『中世思想原典集成 7 前期スコラ学』, 古田暁 監修, 平凡社, 1996
印具徹『アンセルムス研究』, 新教出版社, 1951
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