ロジャー=ベーコン

ロジャー=ベーコン(1214頃-1294)はイングランド出身の学者・修道士です。

彼はオクスフォード大学で学び、経験を重視した学問を追求しました。

その背景には、十字軍や東方貿易を通じてイスラーム科学の翻訳書がヨーロッパに知れ渡ったことにあります。イスラーム科学は、現実世界の事象を考察するアリストテレスの自然学の考えをもとに発展しており、オクスフォード大学ではアリストテレスやイスラーム科学の研究が進みました。

マートンカレッジ
オクスフォード大学

ロジャー=ベーコンはイスラームからやってきた学問に触れ、数学の重要性を認識するとともに、自然を経験により認識することで、聖書で啓示される真の知恵を得ようと考えました。

彼はとりわけ光学の研究に注力します。これは、視覚が私たちの現実世界の認識に多大な貢献をしているということと、聖書においても光学に関連する出来事が多数存在することが理由でした。

彼は他にも、将来には現代でいう車や飛行機のような機械も発明されるということを予見しました。


参考文献

『科学の名著 3 ロジャー・ベイコン』, 伊藤俊太郎 責任編集, 朝日出版社, 1980

『講座西洋哲学史. 上巻 (古代・中世)』, 小松摂郎 編, 理想社, 1959


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アベラール

アベラール(1079-1142)はフランス出身の神学者です。

青年期にはさまざまな教師から学びましたが、アベラールは卓越した学識をもっていたため、自身の教師をも論破し名声を得ます。

アベラールが名声を博した理由は、当時一般的に受け入れられていた実在論に対して反論し、唯名論を提唱したことです。唯名論とは「普遍」は言葉にすぎないというものであり、その根拠を理論的(言語学的)に述べました。

コンシェルジュリー(パリ・シテ島)
カペー朝の王宮(現コンシェルジュリー。パリ・シテ島)

やがて彼はパリのノートルダム大聖堂の学校で教師になります。この時にエロイーズという女性の存在を知り、彼女に魅力を感じたアベラールは彼女の家庭教師になるよう取り計らい、二人は恋仲となります。

アベラールは神学者としての立場上恋愛を隠す必要がありました。

しかしアベラールは惚れ気を隠すことができず、授業においても恋愛詩を口ずさむようになったため、二人の関係は町に知れ渡ります。

そしてエロイーズの親族が知ることとなり、アベラールは責任をとってエロイーズと結婚します。しかし様々な不運が重なりアベラールはエロイーズの親族たちにより去勢されてしまい、アベラールはパリを離れることになりました。その後はエロイーズと再会することはなかったそうです。


参考文献

『愛の往復書簡 -アベラールとエロイーズ-』佐藤輝夫 訳, 角川文庫, 1966

『中世思想原典集成 7 前期スコラ学』, 古田暁 監修, 平凡社, 1996


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